2011年9月24日土曜日

「SECRETS OF E-CAT」 初めてのE-Cat本が出版された

ロッシ氏によるE-Catの顧客引渡しが来月に近づくにつれ、E-Catの周辺ビジネスの兆候が色々と出てきました。その一つがE-Cat関連書籍の発行です。どうやら一番乗りは、E-Cat Newsのサイトに紹介された “SECRETS OF E-CAT”(E-Catの秘密) になったようです。
著者はMario Menichella氏で、イタリア人の物理学者ライターとして活躍しておられる人のようです。以下は著者のWebサイトです。
この本は元々はイタリア語で出版されており、買うのを諦めていたのですが(イタリア語は私にとっては全くの暗号です)、こんなに早く英語版が出るとは思っていませんでした。

そこで、本を販売しているページをアクセスしてみました。この本はPDFで販売されており、世界中どこからでも電子的に入手できるようです。価格は7ユーロ。今の為替レートだと750円くらいでしょう。

購入の支払いはPayPalで行えるようです。目次は、以下に公開されていますので、購入される際には参考にされると良いでしょう。私は思案中です。明日には買っているかもしれませんが。
http://www.consulente-energia.com/a-Index.pdf

ところで、E-Cat本はもう一つ出版が予定されています。以下の「Rossi's eCat: Free Energy, Free Money, Free People」です。9月19日発売予定となっていたのですが、まだ出荷されていないようです。英語書籍市場への一番乗りを逃しましたね。
http://www.amazon.com/dp/0955782635

以上

2011年9月19日月曜日

E-Catのセルフサステインモード(Heat After Death)の実験結果

NyTeknik誌のMats Lewan氏による実験レポートを見てみました。
http://www.nyteknik.se/incoming/article3264365.ece/BINARY/Report+E-cat+test+September+7+%28pdf%29
レポートによると、実験に使ったE-Catの新モデルは、50cm×60cm×30cmの大きさと約80kgの重さがあり、以前のモデルよりだいぶ巨大になっています(その分、1台あたりの出力も増えています)。
このE-Catに水を注入すると、中の常温核融合反応部分で熱せられ、熱水と蒸気として外に排出されます。
今回の実験は、非常に限られた計測装置と時間の中で行われており、残念ながら科学の厳密な検証に向けたものではありません。例えば、温度は計測されていますが、発生熱量を正確に測定するための機器が用意されていません。しかし、E-Catの「セルフサステインモード」がどのようなものであるのかを知る上では貴重だと思います。

実験レポートにも温度変化の図がついていますが、最初からの温度の立上りが知りたかったので、温度データのExcelシートをダウンロードして、自分でグラフを書いてみました。主なイベントを記入したものが以下です。
18:59からヒーター電力を徐々に上げるに従って、出力温度が上昇して行きます。そして、温度が133度Cになった22:35にヒーター電力を切り、最終的に23:10にポンプを停止して水素ガスの圧力を下げます。この22:35から23:10の期間が、入力エネルギー無し(ヒーターオフ)の状態で出力(熱)を発生し続ける「セルフサステインモード」での動作です。
セルフサステインモードの期間には出力温度の低下が見られますが、23:10に水素ガスの圧力を下げた後の急激な温度低下に比べると低下は小さいものであり、熱発生が続いていると推測されます。

レポートの評価では、出力熱量は、少なくとも3.8kWで、多ければ7.8kW程度と見積もられています。入力電力量である2.6kWに比べて利得が小さくなっていますが、出力熱量の計測は非常に粗いものなので、定量的な妥当性を論じても意味はないでしょう。セルフサステインモード時は、入力電力はゼロだったので、出力(3.8kW~7.8kW)はそのまま利得となります。

また、セルフサステインモードについては以下のような記述があります。最悪ケースでは、30分のセルフサステインモード運転の後、10分のフルパワー入力運転が必要ではないかとのこと。これでも、フルパワー入力時間は40分中の10分で済むので、効率は4倍に上がる事になります。こういう運用が、E-Catでセルフサステインモードを使うという意味だったのですね。
Supposedly this Ecat needs 10 minutes of full power electric input after every 30 minutes of self sustaining operation, for stability reasons, in the worst case.
ちなみに、この「セルフサステインモード」は、常温核融合現象の中でも非常に面白い現象で、素人ながら常温核融合現象の本質に迫る手がかりだと思います。蛍光灯のように電力を加えると光るのではなく、ロウソクのように一旦「着火」するとエネルギーを入力しなくても反応が持続するのです。セルフサステインモードは、「死後の熱:heat after death」とも呼ばれています。これは昔から知られていて、例えば、以下のような記録が残っています。



http://www.lenr-canr.org/acrobat/RothwellJmiraiokizu.pdf

「未来を築く常温核融合」ジェト・ロスウェル著 P12から引用
今まで最も劇的な実例は水野の報告実験で 100 グラムのパラジウムの陰極を用いて、一ヶ月以上数ワットの過剰熱を認めて、合せて 12 メガジュールを発生した。一ヶ月すぎたある朝、非常に熱くなっていて、とうとう 100 ワット以上を出力していた。セルは触れないぐらい熱かったので、水野は危険を感じて、電源を切った。切った後も発熱が続いた。この現象は他の研究所でも観測されたことがあって「死後の熱」と呼ばれている。水野はセルを電源から取り外して水がいっぱい入っているバケツに沈ませた。次の朝にはバケツの水が全部蒸発していたので、再び満たした。また蒸発してしまい、再度バケツを水で満たした。11 日間に合計 37.5 リットル蒸発してからやっと室温に冷めた。
これはおそらく水野忠彦博士が記述しておられる以下の体験のことだと思われます。

http://www.lenr-canr.org/acrobat/MizunoTjyouonkaku.pdf
「常温核融合プロジェクト」水野忠彦著 P44「1991 年3 月 水野の閉鎖セルから出た異常発熱」からの引用(読みやすさのために引用者が一部改行、赤色を追加した)
そうして4月22日の朝、電気分解を止めて後はパラジウム中に入っていた重水素の放出を待った。 普通、電気分解をストップするとすぐに重水素が放出され、系内の酸素と結びついて熱を出すが、 大体10 時間でその反応が終わることもわかっていた。用いたパラジウムは100g位でほぼ1モル当 量と考えてよい。これに飽和まで水素が入っても0.5モル当量だから出てくる総熱量は151Kジュールが最大である。すると、時間で割って4.2 ワットとなる。しかし実際には重水素の放出量はこの半分であり、2ワットと計算されるのである。この値は電解に要したエネルギーの10 分の1 位なので温度上昇は2℃程度にしかならない。だが、セルの温度は重水素の放出が収まった後でも75℃には下がらずに90℃を示していたのである。このことに気がついたのは4月25日の朝になって再び記録計を見た時である。驚いたことに温度が100℃を示している。しかもゆっくりと上昇していっている。この時は朝の9時すぎで、秋本も中性子の検定を横で行っていた。 
「秋本さん、温度が上がっていっているよ。ちょっと変だ。設定より30℃も高い。目盛りがずれているのだろうか。中性子はどう。」
すると秋本が
「温度が上がっていっているって。ちょっと見せてみて。本当だ、確かに上がっている。」と記録紙 を見ながら言った。
「中性子をチックしてみよう。」と言いながらマルチチャンネルアナライザーのメモリーを切り換えた。
「いや、特別大きな変化はないよ。相変わらず2.45MeVのピークは見えるけどね。格別増えてはいない。どれも同じにみえる。」とスペクトルをみながらいった。
水野は本当に温度が高いのか気になって、手前にある、中性子減速プラスチックのブロックをいくつか取り除いた。電源の電圧、電流ともに安定しており、電解前の20V、3.0Aと一定で、これも1ヶ月の間全く変わっていなかったのである。もちろんこれは安定電源を使っているのであるから当たり前のことである。ヒーターにはステンレスで被覆したシースヒーターと言うものを用いており、この抵抗値が6.67 オームとなっているのであるから、1ヶ月間60ワットであったのである。すると75 度を示していなければならない。しかも電解を止めて3日もたっているのだから、重水素も大体出てしまっているはずである。ただこの時に直接わかるデータは温度と圧力、それとヒーター、電解の電流、電圧である。パラジウム内の重水素濃度は計算しないとわからないのであるが、大体の値は圧力、温度から見当がつくのである。 
ちょっとセルの表面に手を伸ばしてみた。
「かなり熱い。70 度なんてものではない。明らかに100 度以上ある。手で触れるようなものではないよ。」と水野。
「何が起こっているんだ。」秋本が叫ぶ。
「わからない。でも重水素もほとんど出てないし、再結合による熱じゃない。ヒーター電源も60ワットのままだ。」水野
「もしかしたらこれが常温核融合というものじゃないか。」秋本が興奮気味につぶやく。
「まさか。電解も止めているのに。3日もたっているんだ。こんな話は常温核融合でも聞いたことがない。いずれにせよヒーターも切った方が良さそうだ。このままほおっておけばどこまで温度が上がるかわからない。何かあったらこの研究も続けられなくなってしまう。それにこの実験の初めに起きていた爆発も気になるし、あの時の圧力は優に100 気圧をこえていた。それも何百回も起こっていた。事故でも起きたら大変だ。」とうわずりながら、水野は急に不安をおぼえた。
「いや、これは良い機会じゃないか。今まで二年以上も実験をやっていて、やっと熱らしい熱が出てきたんだ、このまましばらく様子を見よう。」と秋本が冷静にいう。
「わかった。でももしここで何か起こるとまずいからセルは移そう。そこで温度を見てみよう。」と水野は何とか結論を出した。 
そして一度自分の部屋に戻り、雑巾やタオルを持って来て、それでセルをぐるぐる巻きにした。金属部分に触れないように気をつけて地下の実験室から3 階の自分の研究室まで運び、大きな厚い金属パネルの後ろに置いた。こうしておけば何か起こってもパネルで囲まれているので危険はないはずだ。設計耐圧は250気圧、フッ素樹脂は別としてステンレス部分は500℃以上になっても壊れないはずだ。もちろん上部には安全弁が付いていて、100 気圧以上になれば自動的にガスが放出されるはずだ。ただし、急激な爆発が起こった場合には耐えられるかどうかは自信がなかった。長い年月、高温高圧下の水素吸収を研究していたので、どのような容器設計が安全か、経験上からわかっているつもりではあったが、このような予想もつかない現象には、今までの知識から対応できない恐ろしさを感じていたのが事実だ。 
このようにして容器を鉄の台の上に置いたのであるが、次の日になってもいっこうに温度は下がる様子はなかった。この日は金曜日であり、連休が近かった。このままでは不安であったので、思い切って冷却することにした。大きな12lのポリエチレン製のバケツに水を半分、約8l位入れセルを漬けたのである。この時の温度はセル上部につけている熱電対の出力を見ると4.0mV になっており、温度に換算すると相変わらず100℃のままであった。すなわちヒーターを切り、電解を止めているのに熱出力としては120 ワットを維持しているのである。すると電解を止めた後の総熱量は1.2×10**7ジュールという熱になる。このようにして水の中にセルを漬けると温度は急に下がっていき、1 時間程で60℃までになっていった。この状態にしておけば温度は下がっていくものと考え、そのままにしておいたのである。次の日の朝、気になって研究室に来てバケツを見て驚いた。八分目位入っていた水がほとんど蒸発して無くなっており、再び温度は80℃前後で変化しているのである。さすがにこうなってくると異常を感じないわけにはいかなくなった。8lもの水を全て蒸発させる熱量は約2×10**7ジュール、燃焼熱や相変態等では説明がつかない熱量である。大体それらの熱は大きく見積もっても10**5ジュールのオーダーであるから、すでに二桁も多くなるのである。そこで、より大きな20リットルのバケツに入れセルが完全に浸かるまで水を入れた。そのようにして3 日後の4 月30 日に再び来てみるとまたもや水が完全に蒸発しており、セルの温度は50℃で変化をしているのである。再度水を15 リットルほど入れ、そのままにして熱電対を記録計に接続し、5月の1、2 日とそれぞれ水を5 リットルづつ足した。そして、連休が終わった5月7日の朝には水は半分ほど残っており、温度も35℃にまで低下し、変動もなくなっていたのである。この時は正確な熱データーを取ることは初めから考えていなかったので、どの程度の熱が出たのかは水の蒸発量などから推論する以外にはない。 
水の蒸発熱は全て合わせると4 月30 日以後には8.2×10**7ジュールとなる。これまでの総発熱量を合わせると、少なくとも1.14×10**8ジュールというとてつもない量の発熱があったことになるのである。これを電解やヒーターに使ったエネルギー2.6×10**8ジュールと比較すると40%となり、電解だけに使ったエネルギーはそれまでにほとんど全て熱として生じているので、この計算は非常に低く見積もった値である。
このような異常な発熱を見たことで、水野はさすがに予想も付かない自然界の奥深さに今さらながら驚かされ、思い知らされたのであった。そして、自分の常識からのがれられないこともあきれてしまった。弱いながらも中性子を自分で確認し、また数が合わないまでもトリチウムさえも検出していながら、熱についてはまさかという気持ちが心の底にあったために、測定の準備も、それが起きたときの対応も全く出来なかったのである。このいつ起こるかわからない熱についてはこの後も何度となく経験するのである。
以上

2011年9月17日土曜日

E-Catの1MWプラントの写真と最新の実験結果

ロッシ氏のE-Catのニュースを継続的に提供してくれているNyTeknik誌のMats Lewan氏が9月14日にE-Catの1MWプラントの写真とセルフサステインモードの実験結果レポートを公開しました。どちらの記事にも数分の動画が付いています。
まだ中身を読めていないのですが、まずは公開された情報を整理しておきます。
【訂正 2011-09-18】 実験結果の数値を記録したExcelシートがダウンロードできたので訂正しました。

【1】 セルフサステインモードの実験結果
See the E-cat run in self-sustained mode
Av: Mats Lewan
Publicerad 14 september 2011 07:00
Just over half an hour without external energy input. Ny Teknik assisted recently in a test where the ‘E-cat’ invented by Andrea Rossi was run in self-sustained mode.

【2】 セルフサステインモードの実験レポート
上記の【1】記事から、以下の詳細レポート(PDF)がリンクされています。

http://www.nyteknik.se/incoming/article3264365.ece/BINARY/Report+E-cat+test+September+7+%28pdf%29
Test of Energy Catalyzer
Bologna  September 7, 2011


【3】 セルフサステインモードの実験結果の数値
上記の【1】の記事の右欄には、以下のように温度データを記録したExcelシートがリンクされており、以下のURLからダウンロードできます。
http://www.nyteknik.se/incoming/article3267991.ece/BINARY/Temperature+data+Sept+7+%28xls%29
が参照されているように見えるのですが、残念ながらリンクは【2】のPDFを指しています。訂正(Excelシートの公開)を期待しましょう

【4】 1MW(相当の熱を発生する)プラントの写真
http://www.nyteknik.se/nyheter/energi_miljo/energi/article3264361.ece
Here’s Rossi’s one megawatt plant
Av: Mats Lewan
Publicerad 14 september 2011 07:00
Here it is: the plant that according to inventor Andrea Rossi will produce one megawatt of thermal energy via an unknown reaction in his ‘energy catalyzer’. The plant is now being shipped to the United States.

上記の記事には以下のような鮮明な写真が貼付されています。

■ コンテナの扉を開けたところ

■入力となる水を注入するポンプ

■出力となる蒸気のバルブ

■コンテナの背面

以上
【追記:2011-09-18】 YouTubeに投稿された動画
上記の記事に載った動画がYouTubeにも投稿されていたのでリンクを載せておきます。私の英語力の問題で聞き取りづらいので英語の自動キャプションに期待したのですが、全然ダメでした・・・全く違うキャプションが付いてしまいます。



【追記終了】



常温核融合ドキュメンタリー映画 The Believers

137 Filmsという科学ドキュメンタリーを作成しているNPOが常温核融合を扱ったドキュメンタリー映画「The Believers」を作っています。9月13日に以下のような最新情報が掲載されました。この業界の事がさっぱり分からないのですが、2012年の公開を狙って編集中のフィルムの持ち込みを開始したらしいです。
The Believers: Finishing Act III.  Cut to-date sent to POV for consideration for their upcoming 2012 season.  Assembling film festival calendar.  Partial screening at Northwestern University's School of Engineering September 27.
楽しみに待ちましょう。以下は4分ほどの予告編です。


The Believers Trailer from 137 Films on Vimeo.

以上

英国の凝集体核科学国際学会の「豊田稔ゴールドメダル」

【2年前に書いた記事です。若干修正しましたので日付を変えて再掲しました】
もう5年以上前の話になりますが、近年の常温固体核融合に対する認知の高まりを示す出来事として、2004年3月に英国での「凝集体核科学国際学会」(ISCMNS)の発足が挙げられると思います。ホームページは以下にあります。

The International Society for Condensed Matter Nuclear Science
A Registered Charity limited by Guarantee registered in England No.514306

この学会設立の中心人物であったW.コリス(William Collis)氏が、設立集会の晩餐会で行った演説の内容が、水野忠彦博士著の「常温核融合 研究者たちの苦闘と成果」のP238に載っていました。研究者の「思い」が感じられて、短くも感動的なメッセージだったので引用させていただきます。
■引用開始
今まで常温核融合は大変ひどい扱いを受けてきた。個々の研究者はお金も地位も研究する場所もなかった。ましてや論文を主要な学会誌に送っても受理されることはきわめてまれであった。さらに、学会で発表することも難しかった。
しかし、今までの15年にわたる努力によって、常温核融合がはっきりと確認された。これによって、ついに凝集体核科学国際会議が英国の公式会議として設立できた。この学会を中心としてさらに発展していこう。もっと多くの会員を集めよう。今まで常温核融合に反対であった科学者でも受け入れていこう。そこになんの差別もないのだ。科学の発展のために、民主的に、開放的に、自由に、これからは進んでいこう。
■引用終了

このISCMNSの初代会長には日本の高橋亮人博士が選出されています。また、この学会の与えた第一回のG. Preparata Awardは、岩村康弘博士と水野忠彦博士が受賞されています。JCFのMLに投稿された高橋博士の記事から引用させていただきます。

■引用開始
JCF会員のみなさん:
Good Newsです。2004年3月20-21日にイタリアのAstiでおこなわれる第5回ASTI会議で凝集系核科学国際学会(ISCMNS)が発足します。この学会の賞として、G. Preparata AwardをCF研究の進展に貢献の高い研究者に送ることとなりました。第一回の受賞者に日本から、岩村康弘さん(三菱重工)と水野忠彦さん(北海道大学)が1,2位で決まりました。他の受賞者は、De Ninno (ENEA), Hagelstein(MIT)です。3月20日にISCMNS会場で授与されます。このPreparata賞はイタリアの理論物理学者でCF研究に貢献の高いGiuliano Preparata(数年前に逝去)を記念するものです。この賞は以前のトリュフ賞(過去4回授与)が名前を変えたもので、日本からは高橋亮人(大阪大)が1995年の第二回に受賞しています。ISCMNSには、岩村、水野、高橋、らが参加の予定です。

高橋 亮人 (大阪大学)
■引用終了


さて、この受賞者一覧が載っているISCMNS Prizesのページ(http://www.iscmns.org/prizes.htm)を見ると、2008年に「Minoru Toyoda氏」の貢献を記念して鋳造されたGold Medalが載っています。まだ受賞者は決まっていないようです。が、高橋亮人博士が有力候補のようです(←この記述は私の誤読です。申し訳ありません。訂正してお詫びします)。

この「Minoru Toyoda氏」とは、アイシン精機社の3代目社長であり、アイシン・エィ・ダブリュ社の初代社長である豊田稔氏(1916-1992)の事です。私も初めて知ったのですが、高橋博士が用意されたゴールドメダルの説明(http://www.iscmns.org/MinoruToyodaMedal.pdf)を見ると、豊田氏は常温核融合研究の開始当初(1989年)から非常に大きな貢献をされていました。説明文からProfileの部分を引用させていただきます。1989年に研究をスタートさせ、欧州の研究所にポンズ博士・フライシュマン博士・山口博士を招聘していたとは驚きです。素晴らしい貢献だと思います。
■引用開始
Profile of late Minoru Toyoda (1916-1992):
He was the former president of Aishinseiki Co., one of Toyota Group Big Companies. He was also founder of IMRA-Japan, IMRA-Europe, Technova Inc., TEET Foundation, and others which have supported CMNS/CF research activities since 1989 through now (2007-2008):
a) ICCF3 at Nagoya was financially supported by his aid.
b) IMRA-Japan started CF research soon after Fleischmann-Pons announcement in 1989.
c) IMRA-Europe provided CF research laboratory to stay and study for Dr. S. Pons, Dr. M. Fleischmann, Dr. E. Yamaguchi, and others who have made great scientific contribution for CMNS/CF experimental studies.
d) IMRA-Japan provided laboratory building for the New Hydrogen Energy Project(1993-1998) of Japanese Governmental Budget (MITI/NEDO). Many Japanese and over-sea researchers stayed in Shin-Sapporo NHE laboratory for the Project.
e) The TEET (Thermal and Electric Energy Technology) Foundation has been awarding Grant-in-Aid for several selected CMNS/CF researchers in Japan every year since 1993).
f) Technova Inc. is a Think-Tank including activity in new energy researches as CMNS/CF.
■引用終了
ちなみに、IMRAとは、欧州での研究開発を担当しているIMRA EUROPE S.A.S.社(http://www.imra-europe.com/イムラアメリカ社(http://www.imra.co.jp/の事でしょう。
同じ豊田稔氏が設立した米国での研究開発担当のIMRA AMERICA .INC社については、最近のニュース「【ファインテック・ジャパン】アイシン、画期的なレーザー加工機を展示(2009年4月17日)」(http://response.jp/issue/2009/0417/article123411_1.html)では、以下のように報じられています。高い志を持った会社なのだと感心しました。
■引用開始
そもそも同社がこのような機械を作るようになったのは、豊田稔元社長の「革新的な研究をして、世の中に貢献しよう」という考えが元になっている。そこで米国に先進的な研究所を設立。それがIMRA AMREICAの前身だった。ちなみにIMRAの「M」は稔の頭文字から取っているそうだ。
■引用終了
【訂正:2011-09-17】
ここで言及されているIMRA社はイムラアメリカ社と書きましたが、コメント欄で、欧州での研究開発及び調査を行っているIMRA EUROPE S.A.S.社の方であるとご指摘をいただきました。ありがとうございました。上記の記事を一部訂正しました。
核融合の研究を行っていたのは、IMRA EUROPE S.A.S.です。
http://www.imra-europe.com/
フランスにあります。
IMRA EUROPE S.A.S.とIMRA AMERICA .INCは、別々の会社です。
IMRA EUROPE S.A.S.は、欧州での研究開発及び調査を、
IMRA AMERICA .INCは、米国での研究開発及び調査
を、行っています。
以上

2011年9月11日日曜日

家庭用のE-Catは予想よりも早く出荷されるようだ

ロッシ氏が自分のブログに書いた記事がE-Cat Worldに紹介されていました。興味深い内容だったので紹介します。

Andrea Rossi posted an interesting announcement on his site today:
WARNING TO ALL OUR READERS: I AM RECEIVING THOUSANDS OF REQUESTS OF INVITATION TO VISIT OUR PLANT. FOR OBVIOUS REASONS OF SECURITY WE CANNOT RECEIVE MORE THAN FEW PERSONS PER VISIT. 
THE START UP TEST WILL BE RESTRICTED TO FEW SCIENTISTS AND SCIENTIFIC JOURNALISTS. THE TEST WILL BE PUT ONLINE, TO ALLOW EVERYBODY TO SEE IT. FURTHER VISITS WILL BE ALLOWED, BUT IN A LIMITED NUMBER AND RESERVED TO SPECIALISTS AND CUSTOMERS. 
I AM VERY SORRY TO SAY THAT FOR SAFETY AND SECURITY REASONS IT WILL NOT BE POSSIBLE TO ADMIT ALL THE REQUESTS OF VISIT. 
IN ANY CASE THE PRODUCTION AND DISTRIBUTION OF OUR HOUSEHOLD E-CATS TO THE PUBLIC WILL BE MADE SOONER THAN EXPECTED, SINCE THE APPROVALS WILL BE FASTER THAN EXPECTED. VERY IMPORTANT NEWS ON THIS ISSUE ARE CLOSE TO BE MADE. WARM REGARDS, A.R. 

要点は以下の通りです。
  • (10月最終週から始まるE-Catの)プラントを訪問したいという希望を数千名から受け取っている。しかし、申し訳ないが、保安上の理由から1回の訪問で少人数しか受け入れられない。
  • スタータップテストは、ほんの少しの科学者と科学ジャーナリストだけをお招きする。
  • テストの模様はオンラインで公開し、全ての人が見られるようにする。 
  • その後も訪問して貰えるようにするが、少人数に限定することになるだろう。
  • いずれにしても、家庭用のE-Catの製造と出荷は予想よりも早くできそうだ。 なぜなら、許可が予想よりも早く取れそうだからだ。この件に関して非常に重要なニュースを近日中に伝えられるだろう

以前は、家庭用のE-Catの出荷までには1年くらいかかると言っていましたが、予想以上に早く進展しているようです。現状、1MWプラントにも発電装置はついていないので、家庭用にもついていないと予想しますが、それでも、700Wの入力で4kwの熱量が得られる暖房機として、暖房費用の低減に多いに威力を発揮すると思います。ちなみに、700Wの入力というのは初期の情報で、「セルフサステインモード」が可能になったと思われる現状では、入力はずっと小さくて済む筈です。近日中に発表されるであろうニュースを期待しましょう。
以上

2011年9月4日日曜日

David J. Nagel博士が立ち上げた常温核融合ベンチャー

Cold Fusion NowにDavid J. Nagel博士のラジオインタビューについての詳細な報告記事が載っています。


Nagel博士は常温核融合分野では著名で、ICCF-15では「Scientific Overview of ICCF15」という全体の解説文をInfinite Energy誌に寄稿されていました。
また、拙ブログでも少し触れたとおり( http://bit.ly/qcUVAz )、水野忠彦博士と常温核融合現象の周期性に関する興味深い共同レポートも出されています。


このインタビュー記事で知ったのですが、Nagel博士も常温核融合関連の新しい企業「NUCAT Energy LLC」を立ち上げられたとのこと。この企業では、まずLENR(常温核融合の正式名称である低エネルギー核反応)関連の教育・セミナーやコンサルティングを提供していくようです。科学者らしいビジネスの立ち上げ方だと思います。
最初に行われるのはLENRの2日間速習コースで、ワシントンDC近くのCrystal Cityで10月3日~4日に開催されます。


以上


E-Cat検証は10月最終週から始まる予定

以下のブログに10月から開始されるE-Catの実機検証についての情報がまとめられていました。


簡潔にまとまっていたので、例によって勝手に和訳してみました。
以下、日本語部分は私の勝手な訳です。最も興味深いのは、検証環境の設置場所がカリフォルニアらしいという所です。ネットでは、最初の顧客の正体についての憶測が飛び交っていますが、その中の一つがGoogleです。もしかすると本当にGoogleなのかもしれませんね。(Google本社は、カリフォルニアのマウンテンビューに位置します)


  • The test will begin in the last week of October
    検証は10月の最後の週に始まる。
    (という事は、10月31日スタートでしょうか?)
  • The test will last for about two months.
    検証は約2カ月続く予定。
  • The other scientists who attend the test will have full access to everything except the reactor.
    検証に参加する科学者達は、反応装置以外の全てにアクセスできる。
  • Rossi may set up an operation in California, he does not say where in California, but it could be Silicon Valley outside San Jose where the US technology industry is centered.
    ロッシ氏はカリフォルニアに設置するらしい。彼はカリフォルニアのどこであるかは明らかにしていない。米国の技術産業の集積地であるサンノゼ郊外のシリコンバレーかもしれない。
  • Pictures of what Rossi calls the “plant” (presumably the e-cat generator) will be published by the end of September Rossi did not say where the pictures would be published.
    ロッシ氏がプラントと呼ぶものの写真が9月末までに公開される予定。但し、どこに公開されるかは明らかにされていない。
  • Rossi said he is working and living full time in the US and only returns to Italy for holidays and to do research and development at the University of Bologna. Rossi lives in Miami and has a workshop there.
    ロッシ氏が語るには、彼は仕事と生活のフルタイムを米国で過ごしており、イタリアに戻るのは休日とボローニャ大学での研究開発のためだけとのこと。ロッシ氏はマイアミ在住で仕事場もそこにある。
  • Rossi admitted that the e-cat is not generating electricity yet but he is working on it.
    ロッシ氏は、E-Catにはまだ発電装置が付いていない事を認めた。但し、彼はその作業に取り組んでいる。
  • He stated: “We do not produce electric power, so far, but heat.”
    彼が言うには「我々は今までの所、まだ電力を生産できていない。熱だけだ」。
  • Rossi said he has a contract with an unidentified buyer to deliver the e-cat in October.
    ロッシ氏は10月にE-Catを出荷するまだ明らかになっていない顧客と契約を結んでいると言った。
  • Rossi also noted that he has been researching cold fusion since 1990 and that he got a burst of energy in 1998. He does not describe what this was.
    ロッシ氏が言うには、彼は1990年から常温核融合の研究に取り組み、1998年に熱量の大量発生に成功したと。しかし、詳しい事は語っていない。

以上