2013年12月11日水曜日

ノーベル賞科学者がネイチャーやサイエンス誌をボイコットすると宣言

今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者であるランディ・シェクマン博士が、Webのガーディアン誌に「How journals like Nature, Cell and Science are damaging science」(NatureやCellやScienceのような雑誌が如何にして科学を傷つけるか)と題する記事を寄稿したのが話題になっています。


まだ中身を読めてないのですが、この記事の中で、NatureやCellやScienceのような科学のプロセスを毒する雑誌には、シェクマン博士や彼の研究所は、二度と論文を送らないと宣言したとの事。目新しい事を追っていて、手堅い仕事をちゃんと評価してない、等の厳しい評価をしているらしいです。

常温核融合ウォッチャー界隈では、以下のような記事/投稿が出ています。
E-Cat Worldの記事

Vortex-lメーリングリストでのスレッド

時を同じくして、国際常温核融合学会の論文誌に「How the Flawed Journal Review Process Impedes Paradigm Shifting Discoveries」(誤った学術誌のレビュープロセスが如何にしてパラダイム・シフトを促す発見を邪魔するか)と題する論文が掲載されたのも興味深い偶然です。(J. Condensed Matter Nucl. Sci. 12 (2013) 1–12)

四半世紀の間、着実にエビデンスを出しながら、所謂主流の学会からは無視され続けている常温核融合研究の状況を見ると、科学の世界のプロセスや営みに何かしら大きな問題があるように思えます。上記の警鐘が見直しのキッカケになれば良いのですが。

以上

2013年12月1日日曜日

スウェーデンのELFORSK社がLENRに関するレポートを公開

エネルギー関連のリサーチを行なっているスウェーデンのELFORSK社がLENR(常温核融合)に関するレポート(PDFで59ページ)を公開しました。

ELFORSK社は、通称Hot Cat、正式名E-Cat HTの第三者検証のスポンサーだった事で一躍有名になりました。その後も広報誌でLENR/E-Catの話題を取り上げており、LENRの動向を重要視していると思われます。

まずは、これまでの経緯を示す記事を紹介します。

ELFORSK社がE-Cat研究予算を確保していた件
スウェーデンのR&D会社ELFORSKがE-Cat研究予算を確保

2013年4月29日月曜日

第三者検証論文のプレプリント
Indication of anomalous heat energy production in a reactor device
(Submitted on 16 May 2013 (v1), last revised 7 Jun 2013 (this version, v3))

ELFORSK社が検証のスポンサーだったと認めるプレスリリースについて
‘Very Remarkable’ ― Swedish R&D Organization ELFORSK on E-Cat Report it Funded
May 23, 2013

ELFORSK社が自社の広報誌でLENR/E-Catを取り上げた件について
Elforsk Magazine Features LENR/E-Cat
October 23, 2013

さて、このレポートは公式にはスウェーデン語版しか出ていませんが、Pekka Janhunen氏やE-Cat Worldの読者やGoogle翻訳によって英訳が作られ、以下に公開されています(PDFとしてダウンロードもできます)。翻訳に努力してくれた方々に感謝します。
E-Cat Worldの紹介記事

英訳版レポート

今回のレポートについては、目の肥えた常温核融合ウォッチャーからは「新しい情報がない」とか「プロの仕事とは思えない」といった辛辣な批評も出ていますが、以下の点でとても注目すべきだと思います。
  • エネルギー関連のリサーチを行なっているELFORSK社の公式なレポートとして公開された。内容について、それなりの信頼性を保証していると見て良いだろう。
  • 著者の一人、Margaretha Engströmさんは、欧州で有数のエネルギー多国籍企業バッテンフォール社に所属している。バッテンフォール社もLENRに重大な関心を持っていると見て良いだろう。
  • これまで、LENRに関する現状説明としては、科学者による「研究の状況」を記したものが主流であった(研究状況の記載の「質」においては、まさしくプロの仕事というもの)。しかし、今回のレポートは、商用化、様々な応用、実用化に向けての課題、特許など、研究以外の全体的な状況を包括的に述べている。ビジネス面まで含めて「包括的」なのが大きな特徴である。

最後に目次(英訳版)を引用します。中身は何も読めてませんが、日本人研究者のお名前も何度も登場します。日本には立派な研究者が何人もおられるのに、産業化で遅れを取っている(ように見える)のが残念です。

Contents
1 Introduction 
1.1 Is there a new kind of energy conversion 
1.2 How it all started 
1.3 A controversial research

2 State of knowledge of LENR
2.1 What is meant by LENR technology? 
2.2 Which are the explanatory models? 
2.2.1 Explanatory models on ball lightning and other plasmodia 
2.2.2 Some explanatory models around ultra cold neutrons
2.2.3 Other explanatory mechanisms around low-energy fusion
2.2.4 Rydberg and Bose-Einstein condition as elements in nuclear reactions  
2.2.5 Hidetsugu Ikegami hypothesis pycnonuclear fusion 
2.3 How much is spent on LENR developments? 
2.3.1 R & D efforts within the academic world and the authorities 
2.3.2 R & D in companies 
2.4 Ongoing research in the LENR field 
2.4.1 Credibility of practical experiments
2.5 EU research
2.6 Commercialization state 
2.7 Applications of interest

3 Validated energy plants
3.1 Validated plasma equipment
3.2 "Validated" nickel-hydrogen LENR plants
3.2.1 E-Cat Leonardo Corporation 
3.2.2 Hyperion Defkalion Green Technologies
3.2.3 BEC Brillouin Boiler TM Brillouin Corp. 
3.2.4 CIHT cell - BlackLight Power 
3.2.5 NANOR TM Jet Energy

4 Possible applications of LENR technology
4.1 Generation of electricity and heat
4.2 Vehicle applications 
4.3 Aerospace and Space applications
4.4 Transmutation of radioactive waste
4.5 Consumer products

5 Questions for the power industry
5.1 Market scenarios 
5.2 Environmental and safety issues 
5.2.1 Unknown negative characteristics
5.2.2 Security 

6 Conclusions
6.1 Where does the research on LENR technology today?
6.2 Where is the explanation / why?
6.3 Where are the biggest challenges?

7 References
7.1 Articles, reports and protocols 
7.2 Websites

8 Attachments
8.1 Patents
8.1.1 U.S. 
8.1.2 Asia 
8.1.3 Europe 

以上

2013年11月23日土曜日

メモ:LENR CarsのNicolas Chauvin社長が出願した特許



矢野研のYano E plusレポートに常温核融合が取り上げられました

小島英夫博士の常温核融合研究所の発行するCFRL NewsのNo.82 (2013-11-20)が発行されました。日本語版はここ 、英語版はここにあります。この記事の中で、市場調査とマーケティングで有名な矢野経済研究所の発行するレポートのYano E plus 2013年11月号(No.068)(有料)に、常温核融合の動向が取り上げられた事を知りました。

企業向けのレポートで1冊1万円以上するので、公開されている目次しか見ていませんが、小島英夫博士はCFRL News No.82で「 一般読者、特にこの雑誌場合は経済界読者に現状を紹介する適切な記事になっています」と述べておられます。

いわゆる学会主流派が常温核融合研究の進展を全く評価しようとしない中で、経済界向けのレポートに動向が取り上げられるとは実に面白い状況です。経済界に身を置く方々は、そろそろ常温核融合のもたらす大きな変革に目を向けた方が良いと思います。

以下、Yano E plusの目次から引用します。

http://www.yano.co.jp/eplus/yearly.php?year=2013
Yano E plus 2013年11月号(No.068)
環境・エネルギー関連》
●常温核融合技術動向 (45~61ページ)
  ~固体中核変換が起きているという証拠は固まりつつある!メカニズムはまだよく分かっていないが今後の解明が待たれる~
  1.エネルギー問題の深刻化
  【図1.世界のエネルギー供給内訳の予測】
  2.核融合とは
  【図2.核融合反応の模式図】
  【図3.核融合反応炉の模式図】
  【図4.核融合反応を利用した発電システムの模式図】
  3.常温核融合とは
  4.常温核融合が注目されるようになった経緯
  5.常温核融合のメカニズムに関する考察
  5-1.正四面体凝縮理論
  【図5.正四面体凝縮理論の模式図】
  5-2.捕獲中性子触媒モデル
  5-3.ナットーモデル
  6.常温核融合の国内研究機関の取組動向
  6-1.岩手大学
  6-2.大阪大学
  6-3.常温核融合研究所
  6-4.中部電力株式会社 エネルギー応用研究所
  6-5.株式会社テクノバ
  6-6.東京工業大学 原子炉工学研究
  6-7.東北大学 電子光理学研究センター
  6-8.株式会社豊田中央研究所
  6-9.日本電信電話株式会社 物性科学基礎研究所
  6-10.北海道大学工学部 エネルギー・マテリアル融合領域研究センター
  6-11.三菱重工業株式会社
  7.常温核融合の海外研究機関の取組動向
  7-1.カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国):University of California, Los Angeles
  7-2.国防総省国防高等研究計画局(米国)
  7-3.プリンガムヤング大学(米国):Brigham Young University
  【図6.プリンガムヤング大学が行なった常温核融合の実験装置】
  8.常温核融合の将来展望

以上

日本の常温核融合研究会の第14回年会(JCF-14)の参加申込み期限迫る

日本の常温核融合研究会(JCF)の第14回年会が12月に東工大で開催されます。
11月25日(月)が参加申し込みの締切ですので、参加を希望される方はご注意を。
開催案内から主要部分のみを引用します。詳しい事は原文を見てください。

JCFのニュースページはここ
JCF-14の開催案内はここ(PDF文書)

❏引用開始
1. 日時
平成25年12月7日(土)~8日(日)の2日間
2. 会場東京工業大学 南8号館―501室(5階)大輪講室
(懇親会場も同じ建物101室)
〒152-8552-S12 東京都目黒区大岡山2-12-1
アクセス: http://www.titech.ac.jp/other/access.html
キャンパス: http://www.titech.ac.jp/about/campus/o_map.html?id=03%2F
3. 講演形式
口頭発表(20-30分程度)会場にはビデオプロジェクターが備え付けられています。
4. 参加費
5 千円(懇親会は別に有料)。なお、JCF 年会費納入がお済みでなければ、この機会に是非とも納入をお願い致します。
※ 発表用アブストラクトの著者となっている学生が、JCF14に参加した場合、参加費は免除されます。
学生証を持参してください。
❏引用終了
以上

2013年11月21日木曜日

LENR Carsに投票しよう



2013年11月11日月曜日

常温核融合カレンダー2014年版にあった能登谷玲子博士の講演の写真




2013年11月5日火曜日

汚染水問題への技術提案募集に応募してきました



以上

2013年10月30日水曜日

スウェーデンのバッテンフォール社がE-Catでビジネス?


以上
 
※写真は、[PHOTO STOCKER]高解像度のフリー写真からいただきました。

2013年10月28日月曜日

常温核融合カレンダー2014年版の販売開始

2014年の常温核融合カレンダーの販売が開始されました。

去年買ってなかなか良かったので、今年も早速1部注文してきました。送料を入れて$18.95 USDでした。届くのが楽しみです。

以下のリンクから申し込みページに飛べます。

以上

デフカリオン社のHyperion R5の実験結果&理論仮説プレプリント公開


デフカリオン社がICCF-18の際に行った公開デモ(と同じ実験?)の結果と、その理論的な説明を記した論文(プレプリント)が公開されました。
以下のPeterさんのブログからリンクされています。著者の一人のJohn Hadjichristos氏はデフカリオン社のCTOだと思います。

http://egooutpeters.blogspot.ro/2013/10/a-seminal-new-paper-about-new-energy.html

❏引用開始
EGO OUT
Thursday, October 24, 2013

A SEMINAL NEW PAPER ABOUT NEW ENERGY.
The ICCF-18 paper:
"Theoretical Analysis and Reaction Mechanisms for Experimental Results of Hydrogen-Nickel Systems" by Yeong E. Kim and John Hadjichristos can be accessed from now at
http://www.physics.purdue.edu/people/faculty/yekim/ICCF-18-JCMNS-KH-Pre-1.pdf

I consider this paper of paramount importance, both by what it says and by the new ways it opens, trends it suggests- it is a (the) genuine New Wave in New Energy opus.
I hope you will approach it with a positive/open minded attitude; your questions and comments focused on the paper are welcome.
Peter
❏引用終了

Hyperion R5の(詳細は省かれた)設計図が載っています。以下の記述を見ると、含まれているニッケル粒子の大きさは、実は5マイクロメーター程度のようです(ニッケルパウダーと言ってますが、ナノパウダーを使っているのではなく、もっと大きな粒を使っている)。但し、このニッケル粒子は、特別な方法で結晶構造を調整されているようです(これはICCF-17の時に発表された論文に出てきた)。
>The Hyperion reactor contains a reactor core of Ni metal foam with many empty cells with average diameter of ~200 microns (μm). Each core is filled with Ni powders of ~ 5 microns (μm). Ni grains had been modified following a proprietary method as described in [1]. The core is supported with a ceramic structure and mu metal layers.

デフカリオン社は、最初はロッシ氏のE-Catを商品化する方向で動いていたのに、途中で袂を分かち、独自の反応炉を開発し始めた経緯があります。そのため、E-Catの秘密を盗んだのではないかとの疑惑を言う人もいたのですが、少なくともHyperionの起動メカニズムはE-Catとは全く別物になっています。
以下の記載によると、タングステンとTZMの電極に定期的にkHz間隔で10〜24kVの電圧をかけて放電させているようです。ヒーターで温める初期温度は、179℃以上と、意外に低い温度です。
>The triggering of the reactions is performed by a HV DC pulsed discharge between W and TZM electrodes (10-24kV, 60-110mA) at a kHz pulse range. This periodic triggering follows the initial pre-heating of the active material at temperature higher than 179℃, using electric heat resistors embedded in the reactor’s structure as in shown in Fig. 1.

水素ガスの代わりにアルゴンガスを使う対照実験系も組まれています。
>Overall cross checking of the system’s performance was performed with a control test using the same system, operating with identical input and coolant flow parameters, except replacing only the H2 gas with Ar gas at the same initial pump-in pressure.

熱量測定の結果は以下の通り。
正実験系:
COP= 3.08
Consumed: 2359 Wh
Produced: 7257 Wh
対照実験系:水素ガスの代わりにアルゴンガスを使用
COP=0.524
Consumed: 5563 Wh
Produced: 2918 Wh

ガンマ線は観測されなかったと言ってます。ただ、実験データが取られたのは5月6日?と違う実験のような気がするのですが・・?
>3.2 Radiation measurements
>As shown in Fig. 4, no gamma rays outside the energy range of 50 keV–300 keV have been observed from the experiments with the Hyperion R-5 reactor (data are from iso-parabolic calorimeter experiment carried out on May 6, 2013).

今回の実験のハイライトである強力な磁場の測定については以下のように記されています。
・毎回の起動サイクルの間、約18cmの距離での測定で、0.6から1.6テスラという強い磁場が観測された。(磁場の強さの比較については以下が参考になります)
http://ja.wikipedia.org/wiki/磁場の比較
・この磁場は、電流を切った後も3〜4秒持続した。

>3.3. Magnetic field measurements
>After each triggering duty cycle (the triggering sequences producing excess heat), the magnetic fields at ~18 cm from the reactor at all three locations rose from ~0.6 Tesla to ~1.6 Tesla (DC peak) during each reaction period. Such anomalous peak signals were maintained for approximately 3-4 sec after the HV currents were cut off.

また、同位元素については、偶数番号のニッケル(58、60、62、64)が過剰熱を生成する一方、ニッケル61は過剰熱を生成しないと述べられています。
>3.4. Even-isotope effect measurements
>It was reported by Hadjichristos et al. [1] that the Hyperion reactor with each of even isotopes of Ni (58Ni, 60Ni, 62Ni, and 64Ni) produced excess heat as described in sub-section 3.1, while the odd Ni isotope 61Ni did not, even though all single isotope crystals were treated using the same preparation and triggering protocols.
This type of experiments will be repeated, using the real time mass spectrometer described in [28].

以上

❏補足
TZMとは、チタンジルコニアモリブデンというモリブデン合金の事のようです。
http://www.vacs-precision.com/molybdenum-and-its-alloys-tzm.html

タングステンの元素記号がTungstenとは似ても似つかぬWなのが不思議だったのですが、WikipediaにWの由来が以下のように記されていました。
>タングステン (tungsten) とは、スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語で「重い石」という意味である。元素記号の W はドイツ語の Wolfram にちなむ(エルヤル兄弟の命名もここから)。これは、タングステン鉱石(鉄マンガン重石)wolfart から来ており、これがスズ鉱石の中に混入すると、スラグを作ってスズの精製を阻害することから、スズを狼のようにむさぼり食べるという意味で名づけられた[3]。

Mu-metalとは、77%のニッケル、16%の鉄、5%の銅、2%のクロム(又はモリブデン)からなる合金で、高い透磁率を持つのが特長とのこと。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mu-metal


NanoSpire社のMark Leclair博士の講演ビデオ

同じくGlobalBEM 2013の講演ビデオです。キャビテーションによる常温核融合を主張しているNanoSpire社のMark Leclair博士の発表です。


以上

GlobalBEM 2013でのRuby Caratさんの発表ビデオ

GlobalBEM 2013 (Global Breakthrough Energy Conference 2013)という会議で、Cold Fusion Now!のRuby Caratさんが発表し、そのビデオが公開されました。


以上

豊田中研が三菱重工の岩村博士の核変換実験を追試

豊田中央研究所の研究者が、常温核融合で著名な三菱重工業の岩村康弘博士の行ったセシウム⇒プラセオジムの核変換実験の追試結果を応用物理学会誌JJAPに発表しました。
海外のウォッチャーから見ると、「トヨタ」と「三菱」という大企業が常温核融合研究に取り組んでいる事を示しているので、とても刺激的なニュースとして受け取られるようです。





以上

水圧破砕法によるシェールガス採掘が地震を誘発する?

長らくブログの更新をしていませんでした。フェイスブックの方が書き込みが楽なので、もっぱらそちらの方に書き込んでいたのですが、フェイスブックの記事を埋め込む方法が分かってきたので、ボチボチ、ブログの方と記事を共用してみようかと思います。

まずは試しにやってみます。







以上

2013年7月15日月曜日

原子力のたそがれ〜負の学習曲線を持つ技術

これはFacebookで筑波大学大学院の北川高嗣博士に指摘されて知った話で、常温核融合には直接の関係はありません。
岩波書店の「世界」2011年1月号に「原子力のたそがれ」という記事が載っています( ここ で公開されています)。
この記事の中に、非常に面白い指摘が載っています。以下、引用します(赤字は引用者)。
ここで重要なのが「技術学習曲線」だ。太陽光発電の単価(キロワット時当たりのコスト)は1980年以降、劇的に下がっている(図3-(A))。この傾向は今後数十年間は続くと見られる。同様の単価の減少傾向が、最初はもっと劇的な形で、集中型の太陽熱発電や地熱発電、風力発電についても見られ、その後もコストの減少傾向は続いている(図3-(B)に、太陽熱発電の例を示した)。
興味深いことに、原子力発電においては全く反対の傾向が見られる。「負の学習曲線」だ(前頁図4)。時とともに、発電容量当たりのコストが劇的に増加している。図に掲げた稼働中原発の数字はアメリカにおける104基のものだから、経験的なデータだ。シミュレーション・モデルによるものではない。一方、将来の新たな原発建設費の見積もり額は、2000年代初めにはかなり低かったが、最近2年の間に劇的に高まっている。原発国とされているフランスでも、原発(加圧水型原子炉=PWR)のコストにおいて、同様の負の学習曲線が見られる。コストは他のエネルギー技術のように下がるのではなく、上昇しているのだ。
「負の学習曲線」という、最近の産業技術ではなかなかお目にかかれない特性が原子力発電にはあると経験値として出てしまっています。これは何十年たっても技術が安定するどころか、ますます困難を増している事を示しています。この記事は、マイケル・シュナイダー氏が2010年10月に行った講演を収録したもので、実に311原発震災が起こる半年前の知見でも、既にこのような状態だったのです。
311が起こる前から、原子力発電は既に命運が尽きていたと言っても良いでしょう。我々にとっての課題は、いかに安全に廃炉を行い、残された放射性廃棄物をどう処理するのかであって、既に死んだ技術を延命させる事ではない筈です。

以上



フィンランドのベンチャーEtiam社の常温核融合特許

少し前の話題ですが、フィンランドのベンチャーと思われるEtiam社の出願した特許が登録されているのが見つかって、常温核融合ウォッチャーの間で話題になりました。話題になった理由は以下の3点だと思います。

  • ニッケルのナノパウダーと水素を使った過剰熱生成を主張しており、かつ、「リュードベリ状態」というデフカリオン社が指摘している原子の状態が説明の中に登場することから、真実味があった。(一般に、特許が登録されても、そこに記述された方式が実現可能かどうかは分からないのだが、中身がそれらしく書いてある)
  • 常温核融合ウォッチャーの誰もが聞いた事のない企業であり、フィンランドで研究が行われているという情報もなかった。(ダークホース出現か?)
  • 論文ではなく、いきなり特許という形で出てきた。(ビジネス化が近いのであろうか・・という期待を持たせる)

Etiam社のホームページには残念ながら情報が殆ど載っていませんが、「Etiam Inc. develops and manufactures innovative products for energy production utilizing alternative energy sources. Our goal is to offer state-of-the-art equipment to study the energy potential of hydrogen gas.」とあるのを見ると、常温核融合を使ったエネルギー発生製品を開発・製造しようとしていると思われます。
http://etiam.fi/

特許の内容についてはほとんど何も見ていないのですが、静かに常温核融合技術が注目されつつある事を示すニュースだと思います。今後の展開に期待しましょう。

以上

2013年6月24日月曜日

Hydrobetatron.org オープン・ソースの常温核融合プロジェクト立ち上げ

またもイタリアからのニュースです。オープン・ソースの常温核融合プロジェクトが立ち上がりました。ピレリー工業高校で、水野忠彦博士が発案されたグロー放電を使った常温核融合実験が行われた事がありましたが、それを主導した教師のUgo Abundo氏とLuciano Saporito氏が立ち上げたようです。
たいへん素晴らしい出来事なのですが、困ったのは、サイトが基本的にはイタリア語で作られている事です。かなり想像を逞しくする必要がありそうです(笑)。

以下は、この事を報じているE-Cat Worldに載った、Hydrobetatron立ち上げを知らせるメールの引用です(赤字は引用者による)。


Open Source Energy Project
Hydrobetatron.org is a website created by the will of Hugh Abundo and Luciano Saporito, just as support for this project, for willingness to work in ‘Under the new LENR science, commonly known by the name (even if improper) of “cold fusion”, with an Open Source philosophy. You can follow step by step all the work of development of the “hydrobetatron,” which will be held in the future, seeking to create a device, (the reactor), efficient and ingegnerizzabile by anyone with the necessary technical skills; in fact, all of the data, research, and construction plans will be in the public domain.
Purpose of the reactor and the production of economical energy, inexhaustible and clean, which we believe is vital to the well-being (and freedom) of man for the salvation of the planet Earth. We invite you to help the project hydrobetatron.org! With the economical energy, inexhaustible and clean, you will help yourself and also our planet!
These days we are building, with a group of founding member LENR researchers, the Association not for profit “OPEN Power”, it may enroll private supporters of the idea of sharing, researchers and other associations, public and private.
The purposes of the statute and the budget of the Association will be consulted on this website; the ultimate goal is to offer all such desirable success of research reached, a free alternative and free (for the exploitation of new energy) to the traditional route search-patent-industrial exploitation by competitors.
以上

E-Cat Worldストアがオープン

E-Cat WorldのFrankさんが、常温核融合関連のグッズを販売するE-Cat World Storeを開店しました。2種類の図案のTシャツを販売しているようです。魅力的なデザインなのですが、私はまだ購入の決断には至っておりません(笑)。

以上




ICCF-18の発表予稿(Abstracts)

どこからリンクされているのか良く分からないのですが、ICCF-18の発表予稿がミズーリ大学のサイトに掲載されています。沢山あって、まだ一つも目を通していませんが・・一覧だけ載せておきます。






以上

2013年6月23日日曜日

ICCF-18のキーノート発表者にNI社社長のDr.T登場

18回目を迎える国際常温核融合会議(ICCF-18)は、米国のミズーリ大学で7月21日〜27日に開催されます。開催プログラムは、ここ に掲載されています。プログラムの内容については、Shinsuke Onoさんが日本語の解説を書いてくれています(ここ)。日本からの講演者としては、岩村康弘博士、高橋亮人博士、日置辰視博士の名前が挙がっています。

今回の会議で私が目を惹かれたのは、キーノート・スピーチに、ナショナルインスツルメンツ社の社長であるDr. James Truchardの名前があった事です(知る人の間では、Dr. T として呼ばれているそうです)。

Dr.Tは、昨年夏のNI社のイベントNIWeek 2012のキーノート・スピーチの中で、常温核融合研究者への支援を公式に表明し、常温核融合研究者を招いて発表の場を設けました。今年のNIWeek 2013には、早々とデフカリオン社が実働デモを出すと表明しています。常温核融合研究にとって大きな存在となったナショナルインスツルメンツ社を率いるDr.Tが何をスピーチするのか、非常に興味あるところです。

以上




2013年6月22日土曜日

Sergio Focardi博士のご冥福をお祈りします

悲しいお知らせです。ロッシ氏と共にE-Catを立ち上げたSergio Focardi博士が逝去されたと、ロッシ氏自身がブログに報告しました。それによると、2013年6月22日午前3時(米国東部時間)にイタリアから連絡があったとのこと。謹んでご冥福をお祈りします。

以下、ロッシ氏のブログから引用します。
Andrea Rossi
June 22nd, 2013 at 2:46 AM
SERGIO FOCARDI, PROF. EMERITUS OF THE UNIVERSITY OF BOLOGNA, IS DEAD . I RECEIVED THE NEW FROM ITALY TODAY AT 3 A.M., USA EASTERN TIME, FEW MINUTES AGO.
We all have lost one of the greatest scientists in the field of the LENR.
For me he has been a tremendous ally, he helped our work enormously and the safety certifications that we are obtaining are the fruit of his consulting during the last 7 years. For me he has been also a teacher for Physics and Mathematics, anytime I needed his help in these matters to better understand the theory behind the effect of the E-Cat.
He has always worked with us with total, absolute and disinterested attitude, thinking only the the interest of the Science behind the LENR.
All the newspapers of the scientific world will say what he has been in the Scientific and University world and his enormous legacy: he has been Professor of Physics, Mathematic, he has been the Dean of the Scientific Faculties of the Alma Mater University of Bologna and the founder of the Cesena branch of the University of Bologna. His pubilcations in the fields of Mathematics and Physics are monumental.
Now, after a long period of illness, that obviously all his friends have taken secret to respect his privacy, he ceased to suffer and starts a new duty for God under anothe form of life. I am sure he will continue to look after my work from where he is now.
See you soon, my great Friend and Master Sergio! I will never forget our work together and that day in the Brasimone Nuclear facility.
Yours Andrea Rossi
以下は、Sergio Focardi博士がTEDxBolognaに出演された時の映像です。

以上

2013年6月9日日曜日

EUの欧州議会で議論された常温核融合

「EUの欧州議会で常温核融合が議論される予定」で取り上げた会議が6月3日にブリュッセルで開催されました。
会議の様子は、イタリアのダニエルさんのブログで詳しく報じられています。以下に関連する記事を挙げます。渾身のレポートではあるのですが、レポート本文はイタリア語なのでとっつきにくいのが残念です。但し、写真に写るプレゼンテーション画面は英語で記述されているので、写真を見て行くと、何が報告されたのかの概要を知ることができます。

New advancements on the Fleischmann-Pons Effect 

会議の概要

New Nucleare Effects in Deuterium-Palladium Electrolysis and Gas Systems under near ambient conditions. 
Michael C. H. McKubre, Ph.D
Director, Energy Research Center
SRI International

Material Science for Understanding the Fleischmann and Pons Effect. 
Vittorio Violante, Ph.D
ENEA LENR Research Coordinator

Anomalous Heat Results from the Naval Research Lab and the University of Missouri. 
Graham K. Hubler, Ph.D
Director, Sidney Kimmel Istitute for Nuclear Renaissance (SKINR)
Department of Physics and Astronomy
University of Missouri

New Evidence of the Cold Nuclear Fusion 
- Accelerator Experiments at Very Low Energies.
Konrad Czerski
Uniwersytet Szczeciński, IFK Berlin

Discovery of New Nuclear Phenomena 
in the Condensed Matter State. 
Robert V. Duncan, Ph.D
Professor of Physics
Vice Chancellor for Research
University of Missouri, USA

この記事に、本会議の出席者が出ており、以下のようになっています。
  • Robert Duncan, Director of Research, University of Missouri (USA)
  • Michael McKubre, SRI International (USA)
  • Graham Hubler, Director of the Sidney Kimmel Institute for Nuclear Renaissance (USA)
  • Stefano Concezzi, Vice President National Instruments (USA)
  • P.J. King, CEO ReResearch (Ireland))
  • Konrad Czerski, University of Szczecin (Poland), Technische University Berlin (Germany)
  • Vittorio Violante, University of Rome, ENEA
  • Andrea Aparo, University Rome Sapienza, Polytechnic of Milano, Ansaldo Energia
  • Enrico Paganini, ENEL Green Power
  • Antonio La Gatta, President, TSEM Engineering and Electronics
  • Giovanni Lelli, Commissario ENEA
  • Aldo Pizzuto, ENEA
  • Massimo Busuoli, ENEA EU – Liaison Office
  • Herbert Von Bose, Director, Industrial Technologies, European Commission
  • Amalia Sartori, President, Committee on Industry, Research and Energy, European Parliament
前半は発表者が並んでいますが、後半はENEAの出席者と、欧州議会の産業・研究・エネルギーコミッティのプレジデントであるAmalia Sartori氏の名前があります。ENEAは、高度情報科学技術研究機構のサイトにあった文書によると以下のように説明されています。こういう機関が常温核融合に関わっている所を見ると、イタリアでは国のレベルで常温核融合が認知されつつあるのではないでしょうか。日本の政治家の皆さんにも注目して欲しいものです。
4.西欧の主な国の研究所
(1)イタリア
(1)-1 原子力関連
 イタリアには、2009年に発足したENEA「新技術・エネルギー・持続的経済開発機構」がある。本部はローマにあり、9研究センターと5研究所がある(図2)。そのうち表3に示す6研究センターとイスプラ研究所がエネルギーや原子力開発に関わっている。
以上

メモ:エネルギー関連研究開発予算における原子力の割合

常温核融合とは余り関係無い話題です。

総務省のページに各国のエネルギー関連予算を比較した資料が掲載されていました(PDF文書)。2ページの資料で、最初のページが以下。
ここにある8カ国の中で、日本のエネルギー関連予算は米国と並んでトップクラスです。驚くべきは、その内訳で、日本の場合、原子力関連予算の割合が高く、他国を圧倒する額となっているのが読み取れます。

2ページ目は、日本原子力研究開発機構の予算構造を説明した以下のようにページになっています。「もんじゅ」「高速増殖炉実用化」「ITER計画」と、私から見ると、実用化できるとは思えない計画に対して合計で500億円以上の予算が積まれ、さらにそれより多い「その他」と「共通経費」がかかっています。「その他」が一番大きい費目というのは、普通の予算説明資料では考えられないのですが、いったい何が含まれているのでしょうか。共通経費も共通として括り出す妥当性があるのかどうか疑問に感じます。
納税者の一人としては、こんな事よりも常温核融合研究に予算を積んでくれと思いますね。
以上







日本の常温核融合研究会(JCF)第13回のプロシーディングス公開

昨年12月に開かれたJCF-13のプロシーディングスが公開されました(PDF文書)。この時は、前日まで出席するつもりでいたのですが、急に都合が悪くなって結局行けなかった残念な思い出があります。
また、今回、JCFのサイトにプロシーディングスを集めたページが出来ました。これは助かります。残念ながらアブストラクト等の公開については整理されていないようです。
以上








2013年6月2日日曜日

EUの欧州議会で常温核融合が議論される予定

イタリア・エネルギー開発機構(ENEA: Italian National Agency for New Technologies, Energy and Sustainable Economic Development)の「ブリュッセルでの今後のイベント」のページに、ベルギーのブリュッセルで開かれている欧州議会の中で、6月3日にフライシュマン−ポンズ作用(常温核融合のこと)を議論する会議が開催されると告知されています。
題名は以下の通りです: New advancements on the Fleischmann-Pons Effect: paving the way for a potential new clean renewable energy source?
(フライシュマン−ポンズ作用の新たな進展:クリーンでリニューアブルな新しいエネルギー源に繋がるか?)
開始時刻は、3 June 2013 at 16:30 との事です。様子が分かるのは、日本時間だと6月4日の早朝になるのでしょうか。楽しみに待ちましょう。

Lenr-Forum.comの記事によると、Nicolas Chuvin氏がこの会議に出席する予定とのこと。Nicolas氏が入手した案内状(申込書)が ここ にあります。
以下、案内文とその勝手な和訳です。日本の政治家の方々も、これを見て焦っていただけると嬉しいのですが。
The aim is to present the “state of play” of this promising research area and its high potential impact in the fields of material science and renewable, clean energy.  (目的は、この有望な研究領域と物質科学とリニューアブルでクリーンなエネルギー分野への潜在的な大きなインパクトの状況を紹介する事にある)
Energy densities measured during Fleischmann and Pons Effect (FPE) are hundreds, thousands and even tens of thousands times larger than the maximum energy associated to any known chemical process. This effect was first discovered in 1989 by two electrochemists Prof. Martin Fleischmann and Dr. Stanley Pons, by loading palladium with deuterium (an isotope of hydrogen). This excess energy is not associated with nuclear radiation and does not appear when light water (H2O) is used. (フライシュマン−ポンズ作用で計測されたエネルギー密度は、これまで知られている化学的なプロセスで発生する最大のものよりも、数百倍、数千倍、あるいは数万倍も大きい。この作用は、1989年に2人の電気科学者、マーチン・フライシュマン教授とスタンレー・ポンズ博士によって最初に発見された。パラジウムに重水素をロードする実験で示された。この過剰エネルギーは放射線を伴っておらず、また、軽水素からなる水を使った時には発生しなかった)
After several years of scientific review process performed by some EU and US research institutions, the existence of this very strong isotope effect as FPE is not under question as it has been observed during joint experiments in different laboratories of the two zones. 数年間にわたるEUと米国の複数の研究所で行われた科学的なレビューを経て、フライシュマン−ポンズ作用のような強力な同位体効果の存在は疑う余地がない。なぜなら、この効果は、EUと米国の複数の研究所の共同研究でも観察されたからだ)
以上

2013年5月26日日曜日

ナノ銀によるゴミ焼却灰の放射線低減実験

ナノ銀によるフィールドでの除染実験」にて、ナノ銀を使って保育園の屋根の洗浄水の放射線を低減する実験結果を紹介しました。阿部宣男博士から、もう一つ、非常に興味深い実験結果のデータを見せていただいたので、ここに紹介します。

ゴミの焼却灰の放射性物質濃度が高いために埋め立て処分できず、いつまでも一時保管庫に置かざるを得ないという問題が起こっています。この実験は、放射線物質を含む焼却灰にナノ銀(ナノ純銀)担持材を混ぜることで放射線の低減を図り、その効果を計測したものです。千葉県柏市南部クリーンセンターにて、2012年3月28日9:30〜11:45に実施されました。

この実験の結果をまとめたレポートは以下です。阿部宣男博士からいただいたレポートを元に、見やすいように筆者が少し手直しをしました。海外の方にも分かるように英語を補ったのは筆者です。また、何かご迷惑をかけるといけないので、阿部宣男博士以外の個人名を削除しました。


実験の概要は以下の通りです。

  • 焼却灰12Kgずつをペール缶に取り出し、3種類の試験濾材を混ぜ、25分後と30分後に放射線を計測した。
  • 25分後の計測では、試験濾材を混ぜた灰をジップロックポリ袋に数百グラム程度取り出したものを計測した。30分後の計測では、試験濾材を混ぜた灰をペール缶に入れたまま計測した。
  • 3種類の試験濾材は以下の通り:
    A 水道水3.6リットル(対照実験として)、
    B ナノ純銀担持コラーゲン溶液10ppm 3リットル+ナノ純銀担持骨炭3Kg、
    C ナノ純銀担持コラーゲン溶液20ppm 3リットル+ナノ純銀担持骨炭3Kg
    (BとCはナノ純銀担持コラーゲン溶液の濃度が異なる)。
  • この結果、BとCのケースでは放射線の強度が低下。例えば、Cの30分後のペール缶の計測では、当初6.12μSvあったものが、試験濾材を混ぜた直後に4.00μSVに低下。30分後の放射線強度は直後と大きな差は見られない。

岩崎信博士が研究会で発表された予稿に載っている実験では、同じように、ナノ銀骨炭を試料に混合した直後に大きな放射線の低減が起こっています。また、その後、放射線の減少は止まったかに見えるのですが、再度水を入れて攪拌すると再び低減が起こっています。

この事から考えると、今回紹介した焼却灰を使った実験でも、再度攪拌すると更なる低減が起こったのではないかと期待できます。残念ながら、この実験時には時間的な制約から30分後までの計測だったようです。

今も毎日、埋め立て処分できないほど汚染レベルの高い焼却灰が増え続けています。今後何十年にもわたって危険な灰を保管し続けるリスクを考えれば、ナノ銀を使った放射線低減は試す価値があると思います。ゴミ焼却に関心を持たれる方々には、是非、試してみていただきたいと願う次第です。

以上

2013年5月21日火曜日

E-Catの第三者評価論文のプレプリント版が公開されました

とうとう首を長くして待っていたE-Catの第三者検証論文のプレプリント版が公開されました。ecat.comの以下の記事で告知されました。プレプリントは ここ からダウンロードできます。


コーネル大学のarXiv.orgにも登録されています(以下)。


プレプリントは29ページあり、表紙は以下のような感じです。

色々なブロガーがこの件を取り上げています。例えば以下。


まだ殆ど目を通していませんが、常温核融合現象やE-Catに対して肯定的なレポートです。幾つかの記事を参考に要約すると以下のようになります。

イタリアのボローニャ大学とスウェーデンのウプセラ大学の科学者が、アンドレア・ロッシ氏の発明した常温核融合装置E-Cat HTを検証。約百時間のテストを二回行い、化学的に生成できる熱量とは桁違いの過剰熱を検出した。二回のテストでの出力は、それぞれ入力の5.6倍、2.6倍に達した。E-Cat HTのHTとは、High Temperatureの略。通称Hot Catと呼ばれている。最初のE-Catの発熱温度が約100度であったのに対し、数百度の温度で発熱する。今回の二回のテストでは、それぞれ302度、438度の平均温度だった。

最後に論文に含まれていた写真から抜粋させていただきます。赤く輝くE−Catは幻想的な印象を与えますね。





以上

2013年5月12日日曜日

デフカリオン社へのインタビューから見える常温核融合に取り組まないリスク

カナダのバンクーバーに移転したデフカリオン社は、昨年夏のNIWeek 2012とICCF-17で常温核融合装置Hyperionの発表を行なって以降、目立ったニュースもなく、沈黙しているかのようでした。このデフカリオン社のCEOであるAlex Xanthoulis氏とコミュニケーション&ビジネス開拓ディレクタのSymeon Tsalikoglou氏へのインタビュー記事がPESNの4月4日版に載りました。

このインタビューの内容が興味深いものだったので、簡単に要点をまとめます(赤色は私が付けました)。
  • 8月に開かれるナショナルインスツルメンツ社のイベントNIWeek2013に実働デモを出展し、技術的なプレゼンテーションを行う。CEOのAlex氏は、ナショナルインスツルメンツ社CEOのJames Truchard氏の物心両面の支援に感謝している。
  • 7月にミズーリ大学で開催されるICCF-18では、準備が難しいためデモは行わず、プレゼンテーションのみを行う。
  • バンクーバー市長は、2020年までにバンクーバー市を世界で最もグリーンな都市にする目標をもっており、デフカリオン社にも良い環境である。CEOのAlex氏は若い頃、バンクーバー市で過ごした事があり、支えてくれる友人も多い。
  • 過去2年間、デフカリオン社は技術ライセンスに興味を持つ約450社からアプローチを受けてきた。その中から対象を20社以下に絞り込み、常温核融合技術の様々な適用を検討している。その20社の分野は以下の通り:
    Water Desalination (淡水化)、Boilers、Trains、Ships、Airplanes、Satellites、Cars、Motorcycles、Hotels、District Heating、Mining、Telecommunications Towers、IT、Metals、Cements、Pipes、Tires
  • デフカリオン社のビジネスは、製品の販売ではなく技術の販売。
  • 但し例外もあって、造船が盛んなギリシアでは、デフカリオン社自身が適用を考えていた。1万8千トンから2万トンの大型貨物船は、毎日2万ドル相当の燃料を消費する。しかし、デフカリオン社の技術(常温核融合)を使えば、このコストは500ドル/日にまで下がる。つまり40分の1だ
  • Alex氏は、この技術を使った新しい原子力発電所のコストは12分の1になると予想している。1キロワット時あたり約0.35セントになるとの予想だ
  • このユニットが家庭のコジェネレーション発電に用いられたとすると、550平方メートルの家の光熱費は半年で300ドルになるだろう。
  • 反応炉の燃料は少なくとも半年は持つ。テストしているモジュールの一つは8ヶ月を過ぎてなおも動いている。
  • もう一つ、デフカリオン社自身が適用を行なっているのは淡水化だ。これは、Alex氏とSymeon氏のお気に入りのプロジェクトだ。世界中の人々に手頃な価格で水を提供できるだろう。エネルギー費用がネックになっているので、この技術が役に立つ。
  • 自動車への適用は欧州最大の自動車会社が取り組んでいる
  • テレコム系への適用は、産業最大級の企業のうちの一社が取り組んでいる
  • 飛行機についても同様だ
  • これらの大企業のうちの一社が、今後6ヶ月以内にこの技術について大きな発表を行う予定だ。最初の商用製品は、2014年の上半期に出てくるだろう
  • デフカリオン社は提携の前に、その分野に同様の適用計画がない事を確認しており、各提携はその分野について排他的になっている
  • ある米国の企業が、デフカリオン社の技術を6ヶ月にわたって評価した。その結果、危険な放射線は出ておらず、若干のガンマ線は観測されるが家庭用トースターより弱い位だったとレポートしている。
  • バンクーバーの本社では約20名の従業員が働いており、世界中に設立した7箇所の研究開発拠点では約17名が働いている。
如何でしょうか? 非常に重要なのは、既に20社近くの企業、しかも、おそらくは各分野を代表するような大企業がデフカリオン社と共同で技術検討を行なっているとの表明がなされている事です。しかも、各分野毎に契約は1社とのみ排他的に結ぶという戦略を取っているとも表明しています。この1社は、常温核融合技術を手に入れる事によって、その業界の中でずば抜けた製品を提供できるでしょう。逸早く常温核融合の可能性に気が付き、技術開発に早く着手した企業が市場で圧倒的な優位性を築くことになるかもしれません。

この記事を読んでいる経営者や投資家のみなさん、常温核融合が世間に認知されてからでは遅いかもしれません。技術評価に着手すべき時が来ています。騙されたり、失望に終わったりするかもしれない? そうですね、そういったリスクは無いとは言えません。しかし、手をこまねいて見ていて着手が遅れるリスクはどんどん大きくなっています。早く可能性に気がついてください。


以上

2013年5月7日火曜日

公開されたE-Cat出荷時の写真

4月末のE-Catの出荷時に撮った写真を公開するとロッシ氏は発言してきましたが、どうやらそれに応じて、JONP(ロッシ氏のブログ)のコメント欄に写真が公開されました。これを見ただけでは、何が証明されたという訳でもなく、従来型のE-Catについては1MWプラントが無事に出荷されたらしい、と言えるだけです。

JONPのコメント欄にF.Fabiani氏から投稿された写真(7枚)










Hot Catの写真?

これと時期を同じくして、ダニエルさんのブログに高温を発するHot Catと思われる写真が投稿されました。真っ赤になった円筒形の物体がHot Catのコアではないかと思われますが、詳しい事は不明です。また、これは、6ヶ月前に撮影された写真との事です。


以上

2013年5月3日金曜日

ナノ銀によるフィールドでの除染実験

ナノ銀による除染実験で一つ気になっていたものがありました。2011年12月10日に郡山市の某保育園にて行われた汚染水の放射線低減実験です。幾つかのブログや動画にデータが出ていたのですが、全体の流れが良く分かっていませんでした。

今回、阿部博士からデータを見せていただいたので以下にまとめます。初期に行われた屋外でのフィールドワークなので実験の厳密性には欠けると思われますが、それでも明らかに線量が低減しています。放射性物質が濾材に吸着したため汚染水の線量が低減した可能性を疑いましたが、その後、濾材の線量も低減しています。まるで放射性物質がどこかに消えてしまったかのようです。

常温環境で自然の半減期を上回る速度で放射性物質の線量が低減する筈がない・・・のですが、この実験では低減しているように見えます。これは非常に重要な実験結果です。是非、他の研究者の方々の追試を期待したいと思います。

1. 実験概要

2011年12月10日、郡山市のある保育園にて、屋根の除染工事と同時にナノ銀による放射線低減実験を行った。
通称「ルーシー」と呼ばれている濾過装置は、ナノ銀坦持骨炭+白御影石を濾材とする4段の装置で水を濾過する。このルーシーを使って合計3回の濾過を行い、各段階で採取された水の汚染度をゲルマニウム検出器によって測定した(測定は専門業者による)。
その結果、濾過によって除染水の放射性物質濃度は初期値に比べて1/10にまで低下した。さらに、この濾材の一部の線量を8日間測定したところ、ほぼ初期の50%以下に低減した。

2. 実験の様子

【保育園での実験の様子を収めた動画】


 【濾材の放射線測定の様子を収めた動画】


3. 実験結果

専門業者による測定結果は以下の通り。値は、除染水の放射性物質の濃度(Bq/L)を示す。時間的な制約により3回目で濾過処理を終了した。
(Bq/L) 原水 1回目 2回目 3回目
Cs-134 13300 1840 1350 1340
Cs-137 18800 2490 1910 1830
<郡山除染汚染水処理 作業日2011-12-10: 中外テクノス報告書より抜粋>

4段構成の濾過装置の2段目の濾材の放射線の線量を8日間測定した結果を以下に示す。数値は線量(μSv/時)を示す。全段の濾材の平均で見ても最終的な線量は12月11日時点の線量の50%以下に低減した。

測定日(yyyy-mm-dd) 放射線(μSv/H)
2011-12-11 0.56
2011-12-12 0.35
2011-12-13 0.36
2011-12-14 0.37
2011-12-15 0.29
2011-12-16 0.23
2011-12-17 0.24
2011-12-22 0.22



郡山での作業日は12月10日であり、濾材はこの日に除染水と接触していた。上記の各数値は12月11日からのデータであり、12月10日作業直後の線量はもっと高かったと推定される。また、バックグラウンド線量が測定されていないので、これを差し引いてない。これらを考慮すると実際の減衰率はもっと高かったものと推定される。

以上

【修正】この記事を書いた時に測定場所をホタル館と勝手に解釈していましたが、確認していないので場所の記述を削除しました。