2013年7月15日月曜日

原子力のたそがれ〜負の学習曲線を持つ技術

これはFacebookで筑波大学大学院の北川高嗣博士に指摘されて知った話で、常温核融合には直接の関係はありません。
岩波書店の「世界」2011年1月号に「原子力のたそがれ」という記事が載っています( ここ で公開されています)。
この記事の中に、非常に面白い指摘が載っています。以下、引用します(赤字は引用者)。
ここで重要なのが「技術学習曲線」だ。太陽光発電の単価(キロワット時当たりのコスト)は1980年以降、劇的に下がっている(図3-(A))。この傾向は今後数十年間は続くと見られる。同様の単価の減少傾向が、最初はもっと劇的な形で、集中型の太陽熱発電や地熱発電、風力発電についても見られ、その後もコストの減少傾向は続いている(図3-(B)に、太陽熱発電の例を示した)。
興味深いことに、原子力発電においては全く反対の傾向が見られる。「負の学習曲線」だ(前頁図4)。時とともに、発電容量当たりのコストが劇的に増加している。図に掲げた稼働中原発の数字はアメリカにおける104基のものだから、経験的なデータだ。シミュレーション・モデルによるものではない。一方、将来の新たな原発建設費の見積もり額は、2000年代初めにはかなり低かったが、最近2年の間に劇的に高まっている。原発国とされているフランスでも、原発(加圧水型原子炉=PWR)のコストにおいて、同様の負の学習曲線が見られる。コストは他のエネルギー技術のように下がるのではなく、上昇しているのだ。
「負の学習曲線」という、最近の産業技術ではなかなかお目にかかれない特性が原子力発電にはあると経験値として出てしまっています。これは何十年たっても技術が安定するどころか、ますます困難を増している事を示しています。この記事は、マイケル・シュナイダー氏が2010年10月に行った講演を収録したもので、実に311原発震災が起こる半年前の知見でも、既にこのような状態だったのです。
311が起こる前から、原子力発電は既に命運が尽きていたと言っても良いでしょう。我々にとっての課題は、いかに安全に廃炉を行い、残された放射性廃棄物をどう処理するのかであって、既に死んだ技術を延命させる事ではない筈です。

以上



フィンランドのベンチャーEtiam社の常温核融合特許

少し前の話題ですが、フィンランドのベンチャーと思われるEtiam社の出願した特許が登録されているのが見つかって、常温核融合ウォッチャーの間で話題になりました。話題になった理由は以下の3点だと思います。

  • ニッケルのナノパウダーと水素を使った過剰熱生成を主張しており、かつ、「リュードベリ状態」というデフカリオン社が指摘している原子の状態が説明の中に登場することから、真実味があった。(一般に、特許が登録されても、そこに記述された方式が実現可能かどうかは分からないのだが、中身がそれらしく書いてある)
  • 常温核融合ウォッチャーの誰もが聞いた事のない企業であり、フィンランドで研究が行われているという情報もなかった。(ダークホース出現か?)
  • 論文ではなく、いきなり特許という形で出てきた。(ビジネス化が近いのであろうか・・という期待を持たせる)

Etiam社のホームページには残念ながら情報が殆ど載っていませんが、「Etiam Inc. develops and manufactures innovative products for energy production utilizing alternative energy sources. Our goal is to offer state-of-the-art equipment to study the energy potential of hydrogen gas.」とあるのを見ると、常温核融合を使ったエネルギー発生製品を開発・製造しようとしていると思われます。
http://etiam.fi/

特許の内容についてはほとんど何も見ていないのですが、静かに常温核融合技術が注目されつつある事を示すニュースだと思います。今後の展開に期待しましょう。

以上